パドルシフトの上手な使い方(操作方法)ー使用車:レクサスIS350ー
パドルシフトは、使いこなすことができれば、MTほどではないですが運転が楽しくなるとても便利なものです。わたしは疲れているときや同乗者がいるとき以外はパドルシフトを常に使っています。
パドルシフトの使い方(操作方法)って、詳しいマニュアル等がなくてわかり難いですよね。よほどの車好きでない限り、パドルシフトの使い方で戸惑うこと間違いなしです。
そこで、パドルシフトの使い方について、レクサスIS350のケースを例に解説動画をご用意しました(初の動画作成チャレンジです)。
補足:パドルシフトとは、ハンドル中央の手を添えるところに付いているボタン(のようなもの)を利用して、車のギアを任意のタイミングで変更するための装置です。シフトノブでギアを変更する場合と比べて、手を離さずに素早く直観的な操作ができるという利点があります。
※上記の画面右下の全画面をクリックすると、ギアの変化がわかりやすくなります。本動画はHD画質なのですが、回線環境によっては低画質で再生が始まることがあります。この場合には、お待ちいただくと、高画質な動画が再生されるようになることがあります。
パドルシフトを使うメリット
パドルシフトを使うメリットは、車を自分で操る楽しみが第一ですね。そして、シフトダウンによりエンジンブレーキ(車が減速する仕組み)を有効利用できることにあると思います(エンジンブレーキの仕組みについては、フロアMTモードの使い方とギアチェンジの仕組みをご覧ください)。
たとえば、
- 少しだけ減速して先行車との距離を調整する。
- 坂道で加速しないように調整したい。
- ブレーキペダルのわずらわしい操作を減らしたい。
などのケースあげられます。
パドルシフトの強みは、指先による直感的な操作ができることです。特に、すぐに車を減速する必要がある場合には、パドルシフトの操作で素早くエンジンブレーキをかけることにより、ブレーキを踏むまでの補助ブレーキとして活用することもできます。
長い坂道が続く場所では、ブレーキを使い続けていると「ブレーキ焼け」が起こり、ブレーキの性能が低下します。
このため、いざブレーキが必要になったときには、停止距離(制動距離)が長くなりますので、エンジンブレーキを併用することが重要になります。
エンジンブレーキを使うことで、ブレーキパッドの消耗を抑えることができるという“おまけ”の効果もあります。
また、高性能ブレーキを装着している車限定ですが、ブレーキダストを抑えることができるという効果もあります。
ブレーキダストはホイールに付着して、ホイールを真っ黒にしていきます。
ブレーキダストはスポンジの水洗いですぐに落ちるのですが、冬場は寒いのでなるべく洗いたくないですよね。
エンジンブレーキを活用すれば、燃費も若干ですが良くなります。これについては、実際に試してみる必要がありそうです(メモメモ)。
ここで余談ですが、ブレーキを踏むと前輪に荷重がかかりますので、フロント(前輪側)のブレーキパッドとタイヤが早く磨耗します。
一方、エンジンブレーキを使用した場合、FF(前輪駆動)では前輪のタイヤを消耗し、FR(後輪駆動)では後輪のタイヤを消耗します。
このため、FRの場合は、前輪と後輪のタイヤがまんべんなく磨耗するので、タイヤのサイズが前後で異なる(=タイヤローテーションができない)レクサスISなどでは、エンジンブレーキは財布にも優しいです。
最近の技術としては、コンパクトカーのノート e-POWERのようにほぼ回生ブレーキのみで減速できるような車が出てきました。エンジンブレーキよりは回生ブレーキのほうが強力です。
詳しくは、「ノート e-POWERで山道を走ってきました。ワンペダル操作は感動もの?」をご覧ください。
パドルシフトは2タイプある
パドルシフトは、ハンドルと一体型になっているタイプと、固定型のタイプがあります。
一般の車のほとんどは一体型です。一体型の場合、ハンドルを切っていてもパドルシフトが追従しますので、簡単にパドルシフトを使えます。
ただし、カーブなどでハンドルを大きく切っている状態では、下の画像のようにパドルシフトが使いにくいことがあります。
また以下は、固定型のランボルギーニ ウラカンのパドルシフトです。
固定型の場合、指先がパドルシフトからやや離れているのが難点ですが、カーブでもパドルシフト操作がしやすいです。
パドルシフトの使い勝手
パドルシフトの使い勝手は、トルコン式とセミオートマでずいぶん違ってきます。トルコン式はオートマの機構ですので、MTの構造について知らなくても、気軽に運転を楽しめます。またセミオートマ式と比べて耐久性が高いのもポイントです。
セミオートマ式(DCT、DSG、Sトロニック)はクラッチペダルがないMTと同等ですので、特にシングルクラッチの場合には、MTのシフトチェンジと同じようにアクセルを上手く抜く必要があります。たとえば1速から2速に変速する際は、アクセルのオン・オフをしっかりしないと前後に揺れます。
セミオートマ式のタイプは変速のタイムロスが短いため、きびきびとした走りを楽しむことができます。
パドルシフトは使用して楽しいのか気になる方が多いと思いますが、個人的には以下のように車の所有経歴が重要であると考えています。
- 受け入れやすいケース: CVT ⇒ トルコンAT ⇒ セミオートマ(シングル or ツイン)⇒ MT
- 微妙なケース:MT ⇒ セミオートマ ⇒ トルコンAT ⇒ CVT
MTからセミオートマであれば、ふつうに楽しめる方も多いと思いますが、MTが完全にコンフォートゾーンに入っていて、CVTやトルコンATを扱う場合には拒否反応を示す可能性が高いです。
それと、車の特徴も大いに関係してきます。当方、さまざまなパドルシフト付きの車に乗ってきましたが、ライトウェイトボディできびきび走るスポーツタイプの車が運転していて楽しいと感じます。
セミオートマも万能ではなくて、低速域でギクシャクしたり、CVTやトルコンATと比べて耐久性で難があったりします。
セミオートマはもともとMTの機構なので、渋滞からのノロノロ発進などで半クラが多用されると、クラッチが摩耗してしまい、不具合が出やすくなります。
ですので、セミオートマ搭載車のふだんの運転では、MT車と同様にクラッチをいたわること(加減速を滑らかにするとか、発進時に急加速せず、少し走り出してクラッチがつながってから加速する等)が大事になってきます。
輸入車でセミオートマの故障となり、本国で修理となり、数か月の修理期間に加えて(保証対象でないもしくは保証期間を過ぎると)おおよそ40万~60万ぐらいの費用が必要になることもあります。
ちなみにホンダのハイブリッド車(グレイスやフィット等)にもDCTが採用されていますが、低速発進時にはモーターの動力を利用してクラッチ摩耗を防ぐことにより、DCTの耐久性を高めています。なのでホンダのDCTについては、よっぽどのシビアコンディションで走らない限りは、基本的に大丈夫とみても良さそうです。
パドルシフト使用上の注意点
エンジンブレーキを利用して少しずつ減速する場合には、ギアを1段下げて、エンジン回転数が低くなってきたらまたギアを1段下げましょう。
ギアを一気に下げてエンジン回転数を急激に高めると、エンジンブレーキは強く効くのですが、車種によってはATが少しずつ痛む可能性があります。
ただ最近の車はコンピュータに学習機能が付いていて、エンジンブレーキがしっかり効く車も多いので、もしかするとパドルシフトでエンジンブレーキを効かせる必要はないかもしれません。
ちなみにギアを数段階下げるケースとしては、ブレーキと併用して減速する場面もしくは後述するアクセルを踏み込んで加速する場面になると思います。
パドルシフトの故障を懸念されている方もおられるかと思いますが、国産車のATは無茶な使い方をしても故障しないように作られていますので、普通に使っている限りは問題ないと思います。
またMTとは異なり、いきなりレッドゾーンを超えるようなシフトダウンや、エンジン回転数が上がりきっていないのにシフトアップするようなことがないように、コンピュータ側で制御されます。
ただし、CVTの車で取り扱い説明書に「パドルシフトを頻繁に使わないでください」など記載されていることがあります。CVTの車にお乗りの方でパドルシフトを頻繁に使用されたい方は、説明書を読んでみるか、ディーラーに問い合わせてみるのがよろしいかと思います。
パドルシフトは追い越しや坂道などで加速力が必要になったときにも利用できます。ATの車では、アクセルを強く踏み込むとキックダウン(ギアが自動的に下がる)がおき、車の加速力を高めます。
この際、アクセルペダルを大きく踏み込みこんでからシフトダウンするため、タイムラグが発生します。たとえば、追い越し車線に進路変更し、加速するためにアクセルを踏み込んだときにタイムラグ(一テンポ遅れるような感覚)を体感されたことがあるかと思います。
パドルシフトを利用すると、このようなときにタイムラグを無くすことができます。つまり、パドルシフトを利用してあらかじめギアを下げておくと、アクセルを踏んだ直後から滑らかに加速することができます。これはどちらかと言えば、応用操作に相当します。なぜなら、各ギアの限界速度をあらかじめ把握しておく必要があるからです。
また加速前に数段シフトダウンした直後は、当速度を保つためにアクセルペダルの踏み具合を調整する必要があります。
追記:パドルシフトの操作では、アクセルを踏み込んだままシフトアップの操作をしても、自動で最適なタイミングでシフトアップされます(※異なる仕様の車もあります)。すぐにシフトアップしたい場合には、アクセルを軽く抜くという方法もあります。
MT車では、急激にギアを下げるとレッドゾーンと呼ばれるエンジンの限界を超えてしまい、ミッション系の故障の原因になります。
一方、パドルシフトの操作では、レッドゾーンに到達するようなギアチェンジは受け付けないようになっておりますので、故障の心配はありません。ですので、初心者にも安心して使えるというメリットがあります。ただし、ギアを一気に下げるといった使い方は、安全面の問題もありますので、シフトダウンは少しずつ行うのが基本となります。
そんな便利で安全面の優れたパドルシフトですが、これはデメリットにもなります。
たとえば、パドルシフトの操作では、安全性の確保と車への負担を軽減するためにコンピュータが介入するため、ギアの変更がすぐに受け入れられないことがあります。
このため、MT車からパドルシフト付きのATに切り替えるとかなり違和感があると思いますので、DCTの車は別として、MT車とパドルシフト付きATの操作は別物と考えたほうが良いです。
6速ATのレクサスIS350でシフトアップが受付けられないケースとしては、以下が挙げられます。
- 規定の速度に達していない。ノーマルモードの場合、おおまかには、2速は10km/h~、3速は20km/h~、4速は30km/h~、5速は45km/h~、6速は65km/h~といった制限があります。
- アクセルをある程度踏み込んでいる。低速域のギアほど、アクセルを開放しないとギアが切り替わらないように設定されています。
いずれのケースも条件を満たすまでシフトアップ待ちの状態になります。
また、スカイライン350GTハイブリッドの上位モデルであるタイプSPでは、パドルシフト操作時にシフトアップが受付けられない場合には、シフトアップせずに『ピピッ』というアラート音が鳴ります。
このようにパドルシフトには制限もありますが、パドルシフトは初心者でも安心して操作ができますし、コンピュータにギアの変更を受付けてもらえるように計算して操作するのも意外と面白いです。
ちなみに、レクサスIS350の説明書によると、ギアのレスポンスは0.1秒となっています。
タイムラグが気になるのは、ギアのレスポンスよりも、パドルシフトを引いたときの鈍い感触のように感じます。
シフトノブの+・-レバーを使ってシフトチェンジするほうが滑らかな感じがします。
普段の街乗りであれば、パドルシフトでも十分に早いレスポンスだと思います。
おまけ2:パドルシフトのレスポンスを検証するための動画もご用意しましたので、ぜひご確認ください。
この動画の解説記事も長くなりましたので、こちらから続きを書いてあります。シフトダウン時の注意点についても書いてあります。
前期型のISにはノーマルモード、パワーモード、スノーモードの設定があります。ノーマルモードは燃費を優先したモードであり、エンジン出力が抑えられるため落ち着いて運転できます。パワーモードではアクセルのレスポンスが大きく向上し、車の性能を引き出した運転ができます。スノーモードは雪国専用で、2速発進になりアクセルを踏んだときのエンジン回転数の上がり方がゆっくりになります。
また、前期型のISでパドルシフトを操作するには、シフトノブのSレンジ(スポーツモード)に設定する必要があるのですが、このときドライブモードから切り替えた場合には4速からスタートします。40キロ以上で走行中にスポーツモードに切り替えるとエンジンブレーキが発生してしまいますが、素早くシフトアップすればエンジンブレーキはほとんど掛かりません。つまり、走行中にパドルシフトのモードに切り替えることが可能です。
余談ですが、2008年のマイナーチェンジ後のレクサスISでは、シフトノブのSレンジに切り替えなくても、Dレンジのままでパドルシフトを操作できます。
最近のパドルシフト付きの車には、パドルシフトを操作したら自動的にマニュアルモードに切り替わるモードが付いていることが多いようです。
パドルシフトの練習をはじめる場合には、まずはノーマルモード+Sレンジ(パドルシフト)を使って慣れることをおすすめします。ある程度操作に慣れれば、パワーモード+Sレンジ(パドルシフト)でも安全かつ快適に運転することができます。
パワーモードにすると、アクセルペダルの踏み込みとパドルシフトの操作に対する反応が早くなり、軽快に走ることができます。
ちなみにレクサスISは、250と350ともにエンジンパワーのあがり方がリニア(線形)なので運転しやすいです。
パドルシフトのレスポンスのページへのリンクを貼っておきますね。
パドルシフトの使い方&レスポンス‐ レクサス IS350 ‐
以下は、パドルシフトの実践的な使用例です。
基本的な使用例
- 70キロの6速で走行中に40キロまで速度を落とすシーンを想定します。この場合、後続車に減速することを知らせるために、ブレーキランプが光る程度に軽くブレーキを踏み、6速⇒5速⇒4速と手動でシフトダウンすればスムーズに減速できます。
- 一定速度以上に速くならないように調整するときに使います。たとえば、比較的急な下り坂を走行中に、時速60キロ以上の速度を出したくないケースを想定します。この場合、4速もしくは5速に設定すれば、エンジンブレーキがかかっておおむね60キロ以下の速度に抑えることができます。
- 先行車との距離を微調整するときに、ちょっとしたブレーキとしてギアを一段階落とし、エンジンブレーキを活用するのが便利です。特に、渋滞やアップダウンの多い場所のようにブレーキペダルの操作を頻繁に行うようなケースではパドルシフトのありがたみを感じます。
応用例
- 信号待ちからの発進では1速からのスタートになりますが、右折や左折時にはハンドルを大きく切るため、パドルシフトの操作がし難いです。そこで、曲がった先のギア(例えば2速)に設定しておけば、自動的にギアが2速まであがります。もしくは、コーナリング中にシフトノブの+レバーを使ってシフトアップする方法もありです。後者のほうが自分でシフトップのタイミングをコントロールできる分、気持ちよく運転することができます。
- <フットブレーキをなるべく温存させるために使います。ブレーキはなるべく軽く踏んで、極力エンジンブレーキで減速するような運転方法です。高性能なブレーキを備えたスポーツセダン・クーペでは、ブレーキパッドが良く減るため、ブレーキダストが多く発生します。最近の車はブレーキダストがあまり出ないように工夫されていますが、それでもある程度のブレーキダストはたまります。レクサスISの場合、前期式ではブレーキを多用していると1週間程度で前輪が真っ黒になります。ですが、エンジンブレーキを利用すれば、ブレーキダストの量をかなり抑えることができます。
- 追い越し時や上り坂などで力強く加速したい場合,任意のギアにシフトダウンして加速力を高めることができます。ある程度練習が必要になりますが、慣れるとすごく便利です。ATの場合は、キックダウン(アクセルペダルを強く踏み込んだときにギアが自動的に下がる)が発生するのですが、タイムラグにより1テンポ遅れた感じ の加速になります。
- 雪国にお住まいの方限定ですが、雪道やアイスバーンではブレーキを踏む代わりにエンジンブレーキを少しずつ利かせる方が車をコントロールし易くなるため、安全性が高くなります。
パドルシフトを使用していると、現在の設定ギアを確認するために視線を下に移すのが煩わしいことがあります。
ですが、ヘッドアップ・ディスプレイが普及すれば、この問題は解決しそうですね。
パドルシフト付きのセダン・クーペなどについては、こちらの記事「パドルシフト付きの中古車をまとめました。」を参考にしてください。
なお、レクサスIS350は、今なら中古車であれば100万円から購入することができます。程度の良い車が多く、お手頃価格の中古のIS350は掲載されてから売れるまでが早いです。
詳しくは、中古のレクサスIS350を購入した理由、今がお買い得のおすすめ中古セダン・クーペ、中古のスポーツ高級セダン・クーペの魅力(メリット・デメリット)などをご覧ください。
2015年1月20日 追記
パドルシフトの解説動画の英語版を追加しました。
この動画は、上記に挙げた3つの動画をコンパクトにまとめたものです。当方、アドリブで英語が話せないので、原稿を作って100回近く録音しました(汗)アップロードの理由は、これまでの動画が日本語版にもかかわらず、海外からのアクセスが6~7%ほどありましたので、需要があると考えたからです。それにしても、動画編集は大変です。YouTuberの人達がいかにすごいのかを実感しました。
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